無資格・未経験でもチャレンジしやすい介護業界では、資格の意義について問われることがしばしばあります。高度な治療行為を行う医療業界とは異なり、介護業界は要介護者が生きていくために必要な介助をすることが主な仕事だからです。
たとえば親に介護が必要になると、その子どもは介護系の専門学校を卒業していなくても生活介助をするでしょう。しかし親の病気を治療するとなると、そうはいきません。
つまり介護業界の仕事はその気になれば誰でもできるというイメージを持たれているため、介護系の国家資格についての意義が問われてしまうのです。
実際に介護系の国家資格を有していなくても、日々の業務から卓越した介護スキルを身につけて要介護者からの信頼を得ている非正規職員は存在します。その一方で介護系の専門学校を卒業し国家資格を取得しているのに、丁寧な介護をしすぎて要介護者から過剰介護だと思われてしまう正規職員も存在しています。
すなわち医療業界では病気が治ったかどうかが判断基準になりますが、介護業界では要介護者がどう受け止めるかが大きな判断基準になるのです。
この現状は介護施設を選ぶ側にとっても、重要なポイントとなります。職員のほとんどが国家資格を有している介護施設を選んだからといって、必ずしも素晴らしい介護を受けられるとは限らないからです。
このようなギャップを解消するために介護施設側は、職員に介護技術をひたすら身につけさせるという指導方針を転換していかなければなりません。業務マニュアルのみを遵守させるのではなく職員ひとりひとりの感性を重視し、心と心が通じ合う介護を目標にしていけば、資格の有無によるギャップはなくなっていくといえるでしょう。